君と薔薇のヴァイオリンソナタ

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  「あっ!そのケース、バイオリン!?人に下手って言うくらいならあなたが弾いてみなさいよ!」 こいつ… いちいちムカつくな。 後悔させてやる! そいつのヴィオラを取り上げて構えた。 「えっ…ヴィオラで弾くの?指使いも違うのに」 「楽譜よこせ!オクターブ下げて弾いてんのか?」 C線を鳴らしてみる。 けっこう良い楽器だ。 ♪───── ベートーベン ヴァイオリンソナタ『春』 ヴィオラを弾くのは 久しぶりだ。 深みのある音が広がる。 空も緑も薔薇も この響きと溶け合う。 昨日のコンクールなんかより ここで弾いた方が ずっと気持ちが良いな。  
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