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さくがいなくなって、
急に静かになった公園は
どこか居心地が悪く、
俺は足早にそこから
立ち去った。
薔薇園を出る前に一度だけ
振り返って、外れにある
あの満開の薔薇を見た。
近くで見るとたくさんの薔薇に
囲まれている感覚だったが、
遠目に見るとぽつんと一部だけ
ピンクに染まっていて、
物寂しい空気を帯びていた。
さっきまで俺がいた場所は、
そのさらに奥。
木立に囲まれた円形の芝生の
その広場は、近づいても
ほとんどその存在に気付かれないような場所だ。
まるで秘密基地だな…。
あの数時間は、今思い返すと
夢の中での出来事だったのではないかとさえ感じた。
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