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何分経っただろうか、
しばらく目をつぶっていた
だけだったが、ふと
間近に人の気配を感じた。
頬がくすぐったい。
「大丈夫?」
目を開けた瞬間、
至近距離にさくの顔があって、驚いた。
さくは横で膝をついて
俺の顔を覗き込んでいて、
肩から落ちた栗色の巻き髪が
ひと房俺の頬にかかっていた。
「どうしたの?」
さくは俺の鼻の先から
20センチも離れていない
距離で口を開いた。
人工の宝石みたいに澄んだ
綺麗すぎる瞳や
少しツヤのある薄紅い唇を
急に意識してしまって、
なんだか突然恥ずかしく
なってしまった。
「何がだ。いいからどけ。
なんで来た」
さくが俺の上からどいたので、
俺も上体を起こした。
「え?電車で…」
「違ぇ!風邪だろ!
どうして来たんだ!」
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