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質問を取り違えたのが
恥ずかしかったのだろうか、
さくはぶすっと拗ねたような
むくれ顔で言った。
「だってもう熱ないもん…。
それにせっかくヴィオラ教えて
もらう約束したんだもん…」
その拗ねた態度が笑えて、
つい頬がゆるむ。
「ははっ…だけどもし今日俺が
いなかったらどうすんだよ」
「だってかなたくん来てる。
1人でずっと待ってるなんて
可哀想だなと思って」
「…俺もだ」
皮肉なもんだな。
だけどさくが来なければ、
俺はきっとこのまま眠ってしまって、凍死は大袈裟にしても
風邪くらい引いていただろう。
特に今俺は、いつ死んでも
身体がどうなっても
構わない、そんな心境だ。
さくが俺を現実に引き戻した。
ありがたくも憎らしくもあるが
たぶん俺はやっぱり
さくが来るのを待ってた。
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