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開放のロングトーン。
やっていることは単純だが、
一定の重さで弓を弦に乗せ、
まっすぐブレ無く弾くのは
かなり弾き込んだ人間でなければ難しい。
さくの演奏はほとんど
フィーリングで、そこに人の
心を揺さぶるものがあるのが
良い所なのだが、
そこに確かな技術を加えて
“音楽”を完成させるには、
やはりこういった
単純であるからこそ難しい、
正確さを求める練習も必要だ。
さくのロングトーンは、
「弓が曲がってる」
「ハイッ」
「弓を返すときブレるな」
「ハイッ」
「気分で弓のスピードを変えるんじゃない」
「ハイッ」
───とにかく粗が目立つ。
これは時間がかかりそうだな
と一瞬思った後、
俺はこの考えを改めた。
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