ちぐはぐワルツ

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  「…なによそれぇ! こっちは真剣に やってんのよっ!!」 さくが単純な奴で助かった。 少し申し訳なくなってきたから 取り繕ってみる。 「あー、うん、ロングトーンは 良くなってきたからさ、 次スケール行こう」 「…ほんとにぃ?」 さくの目が据わってる。 「悪い、本当だって! 言えば良くなるんだよ、 さくは!」 そう言った瞬間、 さくのはきょとんと 目を見開いて固まった。 「…な、なんだよ?」 「…私の名前、覚えてたんだ」 そういえば、まだ一回も さくの名前を口に出して 呼んだことがなかった。 なんだかこっぱずかしくて 顔が熱くなってくる。 「なっもういいだろ! 練習だ、練習!怠けるな!」 「ふふっ…はぁーい」 さくはニヤニヤしながらも 従った。 気持ち悪い奴だ。  
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