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俺が渡した楽譜を手に
何とも言えない表情を浮かべるさく。
「なんだよ?」
押し黙ったままのさくに
痺れを切らした俺が
強く声をかけると、
さくはようやく口を開いて
ぽつりと呟いた。
「…楽譜」
「あぁ?楽譜がどうした」
「楽譜…、読めない」
「はぁ!?」
嘘だろ…!?
「…今までどうやって
弾いてたんだ」
「んーと、なんとなく、かな」
「なんとなくって…」
だからこいつの選曲は
誰もが聞いたことのある
有名な曲ばかりだったのか。
俺は、さくの書き込みも
何もない真っ白な譜面を
思い出した。
「ト音記号も読めないわけ?
ヴィオラ記号がじゃなくて?」
ヴィオラの楽譜はハ音記号で書かれる。
ト音記号より1オクターブ下
から1音上げて読むので、
慣れるまで大変なのだ。
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