第三章 虚空のレトリック

39/40
前へ
/248ページ
次へ
「……悪い」  顔色の悪くなった茉琴を見て、憂禅は素直に頭を下げる。まだ頭痛や倦怠感はあるが、じきに良くなるだろう。『シグルズ』や『グラム』は、基本的に治癒能力が高い。  茉琴は苦笑し憂禅の頭をなで、立ち上がった。少しよろけているのを見て、憂禅の内に罪悪感がわきおこる。  憂禅も立ち上がり、空を見た。だいぶ陽が傾いている。あの荒野はかなり遠いところにあったらしい。  安全だと判断できる場所まで運んでくれたのだろう。 「そういや、ユウ。言わなアカン事があるんよ」  茉琴がわずかに声の高さを落として憂禅に語りかける。気まずげなその様子に、憂禅は茉琴の顔を見上げた。
/248ページ

最初のコメントを投稿しよう!

284人が本棚に入れています
本棚に追加