第三章 虚空のレトリック

40/40
前へ
/248ページ
次へ
「お譲ちゃんが、逃げ出してしもうた」 「……、は?」  憂禅はしばらくその言葉の意味がわからず硬直した後、びしりと特大の青筋を米神に浮かべた。 「あの、女……っ」  コッペリアは自分がどれだけ危険な存在なのか理解していない。  自分が知ったのは後だが、彼女は前世では人形だったそうではないか。それは、この国においてはありえない。『生物』しか、この国には転生できないのだ。  だから、彼女がこの国に転生したということは――。 「あいつはほぼ間違いなく『潜在者』だ。拉致られたりでもしたら……!」  憂禅は拳を握りしめる。自分たちの監視が甘かったせいだ。 「――行くぞ」  憂禅は歩き出す。目的地は、あの式を見た瞬間から決まっていた。 四柱の情報を知っていて、なおかつ式を使うことのできる人間。そんな人物は、一人しかいない。 ・
/248ページ

最初のコメントを投稿しよう!

284人が本棚に入れています
本棚に追加