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「…………」
「…………」
「…誤解だ。頼むからそんな目で俺を見ないでくれ…」
嘆くように呟いたさっちゃんはようやく俺の上から退いてくれた。やれやれ、大人ひとり、いくら全体重かけてないからって腹に乗られたらそれなりに重いんだよ?
解放された息苦しさをよそに、空気は重苦しいものになっていく。
まぁ普通に考えればびっくりだよね。生徒会室で先生がいたいけなひとりの生徒を押し倒してるんだもん。
冷ややかな四つの目が、さっちゃんに向けられているこの状況。さて俺は一体どうやってこの場から逃げようか。
「…こいつか?チケット大量に見つけたやつってのは」
「そうだよ。ちなみにかなりの演技派だ。やられた…」
俺の印象悪くするような言い方しないでくれるかな、さっちゃん。俺まだこの二人の前ではおとなしくするつもりなんだから。
四つの目、もとい会長と副会長の目はようやくさっちゃんから外され、いよいよ俺に向けられた。濡れていた目元をぐいっと袖で拭えば、ふと副会長と目が合ってしまう。
「謎だらけだな、お前は」
「やだなぁ、副会長。俺はいたいけなただの高校男児ですよ」
「ただの高校男児が神谷を陥れられるかよ。しかも今回はチケット大量に見付けてたらしいし。親衛隊に絡まれてないってのも嘘か?」
「そんな顔近づけられたら照れて赤面しちゃいますってば。離れてください」
ずずいっと顔を近づけられたら、近距離にあるその目で瞳を覗きこまれると、なんだか全てを見透かされてしまいそうな錯覚に陥ってしまう。美形ってほんと恐い。
「…本当にお前か?」
「本当もなにも、俺は誰がどんだけチケット見つけたのかは知らないですし」
「お前のを抜かせばあと四枚隠していた」
どんだけ見つけたの、俺…。
つか一枚は名前も知らない生徒さんにあげちゃったから残り三枚だったのか。なんなら全部集めたかった。
会長が疑うような目で俺を見てくる。あちらさんとしてはなるべく見付からない場所に隠していたらしいから、そりゃ見た目ガリ勉な俺が見つけたんだとしたら嘘だと思うだろ。だが悲しいことにこれは事実なんだな。
ほんと、悲しいことに。
「顔合わせはすんだか?で、どうすんだコイツ。まだ何かあんのか?だったら俺先に帰るけど」
「やださっちゃん!!さっきはあんなに求めてくれたのにいざとなったら手放すの!?」
「だからてめぇは…っ!!誤解生むような発言すんなっつってんだろー!!」
嘆き再び。
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