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麒麟のたまり場まで戻ってきた俺とアキ。容赦なく体重を預けられていた肩はもうくたくたで、着いた早々俺は預けられていた体をソファへと投げた。
ぐったりとしているアキを見れば、会長との闘いがハードだったということを察することができる。俺が現れた時はうまく動揺してくれたかのように見えたが、そうでもなかったらしい。もしくは、アキが会長を本気にさせてしまうような言葉を言ったのだろう。
アキは一々無駄な言葉が多すぎる。
黙っていればいいものの、ある意味根が素直だから思ったこと企んだこと、そのすべてを馬鹿正直に話してしまうところがある。いくら喧嘩や策略がうまくとも、そこがコイツの欠点となりうまくいくものも、うまくいかなくなるのだろう。
「もうちょっと…っ、優しく扱ってくれても、いいんじゃ…ないかな…っ」
「これが俺の最大の優しさだから」
「っていうかあんなコト言って…よかっ、たの…?」
「あんなコトって?」
「あいつらを、突き放すような、こと…」
殴られ傷付いた口端が痛むのか、その言葉は途切れ途切れだ。なにもそこまでして話さなくてもいいだろうに、彼曰く「しゃべんないと死ぬ」らしい。
「別にいいんじゃない?」
「だっ…て、さ…。今日が契約、最終日…だろ?」
「そうだね」
麒麟に入るときに交した契約。
一週間後…つまり今日予定されていた響との抗争。そこで響を潰す手助けをすること。
その対価として俺がアキに求めたものは、情報だった。本当かどうかは分からないが、アキは平田健斗という人物を知っているらしい。もちろん居場所も。
信じられるような間柄ではなかったが、わらにもすがる思いでその契約を結んだ。
一週間、麒麟というチームに属すること。
特に異論はなかった。
「だって結局潰せなかっただろ?」
「でも…お前は、カナタくんを負かした、んだろ?」
「あれは…」
果たして負かしたと言えるのか。
しばらく互いに攻防戦をしていたが、いきなりカナタ先輩は手を挙げて降参を示してきた。甘んじてそれを受け入れ、俺は一応勝利をおさめた…という結果にはなったのだが。
なんだか納得いかない。
確かに俺は麒麟に協力した。だがそれは結果を生み出さなかった。
もちろん唯一勝利した俺は契約に基づいて情報を得る権利はあるのだが、なんだか納得いかないのだ。
一週間で麒麟に情でも沸いてしまったのか…?
「契約は契約。お前はちゃんと契約を守ったし、問題はないよ。こっちの力不足が原因だしね」
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