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「うわ゙ぁああああーーっ!!」
小さな子供のように大きく口を開けて人目も気にせず泣く姿が目の前にある。
「うぇっ、ゔ…わぁああん!!」
いやでも、子供のほうがもっと可愛らしく泣くんじゃないだろうか。
「うっるせーなー…。泣くならもっと静かに泣けよ」
「ひっ、う…っー…。ふぇっ…だ、だって、ヒ、ヒロト、がっ…あぁぁああー」
「うるせぇ!!」
鉄槌を下す。
あぁ、もう。朝からうるさい。耳がキンキンする。
今日は土曜日。
学校も休みで、俺は朝早くから引きずられるかのように隣の水橋の部屋へと連れてこられた。容赦なく襟首掴んだ大介によって。
せっかくの休日だというのに、早起きした俺に拍手を送ってほしい。
本当ならば、昼まで寝ている予定立てていたというのに…朝からなんて憂鬱なんだろう。
なんで朝から一高校男児の泣き顔と号泣声を見聞きしなげればならないんだろう。
「矢崎ー…今のは痛いと思う」
さすがの俺でも。
そう言った水橋の視線の先にあるのは、鉄槌を喰らわした頭を押さえ悶えるジンの姿が。
当然スルーだ。
「水橋、救急箱ある?」
「え?矢崎どっか怪我してんの!?」
「え!?ヒロトどっか怪我してんのっ!?」
がばりと勢いよく復活を成し遂げたジンの額にデコピンをかまし、違うと首を横に振り救急箱を催促した。
それで勘付いたのか、じりじりと後退していくジンの腕を拘束する。
「やっ、ちょ…何考えてんのヒロト」
「はぁ?何考えてんのはお前だろ、ジン。ほんっとに懲りねぇやつだよな」
「いや、え…まじ?待った待った!!こいつらの前で手当てすんのは嫌だからな!!」
「やっぱまたやったのか。却下だ、俺の言うこと聞かないお前が悪い」
「ねぇ、なんのはなし?」
いやいやと首を振り俺から逃げようとするジン。そこに救急箱を持った水橋がやってきた。
それを見てさらに強まるジンの力。
さすがの俺でも腕一本じゃ拘束は難しいと判断した結果、足をはらって倒れた体に馬乗りになる。暴れるならば腹に全体重をかけ黙らせる。
なんともやりやすい体勢だ。
「やだ…ヒロトぉ…っ」
「知らねぇ」
「見せたくねぇんだよ…」
「じゃあなんで続ける」
「それは…」
言葉をなくし黙りこんだその隙をついて、シャツの袖を上げる。露出するはずの肌に巻かれた包帯は、いつから換えていないのか、よれていた。
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