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さっきの流れから、当然のように計四人分の朝飯を作る。まぁ一人も二人も三人も四人も変わらないよね、料理って。
ハムエッグに食パン、サラダにソーセージなんかも添えちゃったりして。
いつからかできるようになっていた卵片手割り。それを見た水橋がすげーすげーと連呼。添えていたソーセージをつまみ食いする大介ちゃんに、皿を用意してくれるジン。
当然大介ちゃんの皿からはソーセージの数を減らさせていただきました。
「いただきまーす」
嬉々とした様子でハムエッグにかぶりつく水橋とジンに対して大介は(他の皿よりソーセージの数が少ないことに気付き眉間に皺を寄せたりもしたが)黙々とサラダをつついている。
新しく包帯も換えたからジンの腕からちらりと見える白いそれも、見えてあまり不快なものじゃないし、食べながらしゃべるせいで何を言っているのかも分からない水橋のせいで朝から騒がしかったけれど、賑やかなのは嫌いではない。
むしろ、ひとりきりの朝食には違和感を感じるほどだ。神楽と出会う前は朝飯どころか誰かと食事をした記憶だってなかったのに。
「…んむ?やはき、ろぉひは?」
「きったね!!馬鹿信吾!!ちゃんと飲み込んでからしゃべれ!!」
「んぐっ、ん。どうした、矢崎。さっきから箸進んでないぞ?」
「ただ食欲が沸かないだけだよ」
「そ?」
「ヒロト食欲ないの?俺が食べさせてあげようか?」
「遠慮する。大介が目の前で腹踊りしてくれたら食欲沸くと思うよ」
「は!?」
「桐谷ーっ!!腹踊りやれー!!俺が許すっ」
「馬鹿か、誰がやるかよ。つかこいつの冗談間に受けんな。っのチビ!!」
「冗談…?」
「冗談じゃないよー」
「っ、てめぇ騙したな!!一瞬でもヒロトうたがっちまったじゃねぇか!!詫びとして腹踊りしろ!!」
「俺じゃねぇだろ。思いっきりコイツ笑ってんじゃねぇか…」
「俺が腹に顔書いてあげようか?大介」
「てめぇもか水橋…」
―――…。
「大介のばかー!!殴ることねぇじゃん!!」
「自業自得」
「桐谷ー腹踊りー」
「しねぇっつってんだろちび」
「チビじゃねぇ!!この木偶の坊!!」
「でく…!?」
「そーだそーだ、背が高くても威張れるわけじゃないんだぞぉ!!」
「そーだそーだ」
「お前ら…」
――あぁ、どうしよう。
「ったく、お前もぼっとしてないで……ヒロト?」
「………」
顔を覗きこんでくる大介から表情を隠すように、掌で口を覆った。
どうしよう。
今俺…楽しいとか思ってしまった。
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