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心は、痛みを忘れることはなかった…
ある夏の夜、急に胸が痛みだした。
汗がだらだら流れ出てて、とても気持ちが悪かった。
家には誰もいないし助けを求めることもできず、フラフラと洗面所へ向かう。
灯りを点け水を飲む。
喉が焼けたように熱い。
水が喉を通り過ぎたあたりで思い切り吐き出す。
血が混ざっていた。
「ああ、いつからだろうか。こんなふうになってしまったのは…。」
思えば、最初からだったかもしれない。
僕が生まれたときから、ずっと…。
僕が生まれたとき、母は死んだ。
僕は母の顔を写真でしか見たことがない。
父は僕が17の時に死んだ。
僕には父と過ごした記憶がほとんど残ってない。
今、自分の年がいくつなのか分からない。
胸の痛みと共に、心が傷んだ時の記憶を思い出す。
そうやって、記憶を取り戻してきた。
今までも…きっとこれからも…。
また胸が痛みだす。
値札の付いた下駄…。
1500円。
不思議だ…。
過去の僕は何故にこの安下駄を見て心が傷んだのだろう…。
不思議だ…。
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