素手

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目が覚めた。 素手で目を擦りながら自室を出る。 今日もいい天気だ。 俺はそんなことを思いながら廊下の窓を素手で開ける。 素手で手摺りに掴まり階段を下りる。 素手で顔を洗い、素手で寝癖を直す。   今日は家族はみんな7時には家を出た。   「こんな糞早い時間によく出勤できるよな、本当に」 独り言を呟き素手で食パンを食べる。   素手で服を着替え素手でマグカップを持ち、コーヒーを飲んだ。   そして、分厚い皮膚を素手に装着してファスナーを締める。   「なんてスリリングなんだ。これだから素手はやめらんないぜ!」     そして皮膚で鞄を持ち皮膚で扉を開け出勤した。           この国では皮膚を装着せずにいることは重罪だ。
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