始まりはその日から

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 その結論に達した時、私の身体に鈍い衝撃が伝わった。蹴られたのだ。その痛みに耐えていると、今度は首根っこを掴まれて外に放り出されてしまった。アスファルトに身体をぶつける私。そんな私に店長さんは一瞥をくれるとさっさと店の中に戻っていった。  商店街を行き交う買い物客には、そんな私に嘲りや哀れみの視線を向けてくる者、見向きすらしない者など様々だ。人間とは自分たちより弱いものを見下す生き物なのだと、この身体になって改めて実感した。  しかし、私はそれでも全ての人がそうだとは思えなかった。全ての人を知らないせいもあるのだろうが、朝の駐車場で会ったあの時の女性には嘲りや哀れみといった惨めな気持ちの類いはなかったと、私の中にあった猫としての本能が言っていた。これは錯覚なのかもしれないが、私はその本能を信じたい。  私はアスファルトから鈍痛の響く身体を起こすと歩き出した。宛てはないのだが、私はただあの場から離れたかっただけなのかもしれない。身体に走る痛みに耐え、足を動かすのに精一杯だった私には、それがどちらだったのか分からない。  商店街を抜けた辺りで私は倒れてしまった。視界もボヤけてきた。身体の痛みも増してきているようだ。最後に見たのは、私に差し向けられる人の手。  そして、私は意識を失った。
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