彼女は今日も往く

7/7
前へ
/41ページ
次へ
 家に着くと、自転車を元の置き場に戻して玄関の鍵を開けます。それから黒猫さんと買い物袋を運び込みます。黒猫さんはリビングに置いてあった中サイズのカゴに布を敷いて、そこに寝かせます。  買ってきた野菜と固形タイプの餌は特定の場所に置いて保管します。バラ肉とお刺身ともやしは冷蔵庫に入れます。その時に一緒に、昨日の夜の余り物を出して昼食を摂ることにしました。  その前に、流し台に置いてあった朝の缶詰を軽く濯いで缶を入れるゴミ袋に入れます。朝から水に浸しておいたお陰か、缶詰に付いていた残り滓はすぐ取れました。  私が昼食の用意を終えて居間に移動すると、あの黒猫さんが起きていて辺りを見回していました。まさか、倒れたのが商店街の外れだったはずなのに起きたら見慣れない部屋に居たのでは混乱するでしょう。私でも絶対しますね。  昼食をテーブルの上に置いて、黒猫さんを抱き上げて身体を調べると怪我とかはしてなく、大したことなかったみたいですね。でも、猫さんは身体が『しなやか』なので裂傷とかを負わない限りは大丈夫なはずなんですが、何故この黒猫さんは外傷もないのに気絶していたのでしょうか? 少し疑問に思いますが、朝もそうでしたがこの黒猫さんは間近で見ると可愛いですね。勿論、猫さん全般に共通しての可愛さもありますが、この黒猫さんはそれとは少し違う可愛さがあります。  やはり、朝のもじもじする仕草が効いたのでしょうか? あの子とはまた違った可愛さを持っていますね。また頬擦りしたいほどです。  暫く黒猫さんを抱き上げていると、黒猫さんの視線がテーブルに向いているのに気付きました。そういえば昼食を置いたまま食べてませんでしたね。いけないいけない、この黒猫さんの可愛さにやられてすっかり昼食の存在を忘れていました。  黒猫さんを床に置いて昼食に手を付け始めると、黒猫さんは布を敷いたカゴに戻っていきました。  そういえば黒猫さん黒猫さんと呼んでいましたが、そろそろ名前考えないといけませんね。いつまでも『黒猫さん』じゃ可哀想です。  なので私は、黒猫さんに似合う名前を考えることにしました。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加