そして出会いは再び

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 ……。  私は一体どうしていたのだろうか? 商店街から出た辺りまでは憶えているのだが、それからは全くだ。今、私は知らない部屋にいる。周りを見回し、少し混乱した頭で考えていると近くのテーブルに物を置く音が聞こえた。人が近付いたのも分からないほど考えに没頭していたようだ。視線を向けると、そこに居たのは朝の駐車場で会ったあの女性だった。ということは、ここは彼女の部屋ということか。私は女性の部屋には入ったことないのだがな。  右を見ればピンク色のソファーがあり、左を見ると猫の肉球らしき足跡の柄の壁紙が貼られた壁とドアがあった。前にはテーブル、それもガラスの綺麗なヤツだ。何か落ち着かないのは何故だ?  私は少しそわそわしていたが、いきなり女性に抱き上げられた。何をするのかと、そちらに意識を向けると女性は私の身体を撫で回すように触ってきた。女性は暫く撫で回していると一言言ってきた。 「うーん。意識を失っていたから心配しましたけど、大丈夫だったみたいですね」  大丈夫? 私はこの身体の何十倍もあろうかという程の大人に蹴られたのにか? あれはかなりの衝撃だったはずなのに、それでも大丈夫だと言うのだろうか。私はその『大丈夫』という言葉に疑問を持ったが、よくよく考えてみると身体からは大した痛みを感じないことに気が付いた。その後、この女性が何やら小言を言っていたが、その内容から把握するに、猫は身体が『しなやか』なので蹴られた程度じゃ大したことはないらしい。おそらく私の場合は、人間だった時の感覚を脳が信号で受け取って、気絶したのではないかと思ったのだが、よく分からない。  しかし、この女性は何時になったらテーブルの上に置いてある昼食とおぼしき物を食べるのだろうか? 暫くその昼食に顔ごと視線を向けていると、女性はやっと昼食の存在に気付いたらしい。私を床に下ろして昼食に手を付け始めた。  私は、今は食欲がないためもう一眠りしようかと思って、先程いた布が敷かれたカゴに入った。
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