そして出会いは再び

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「うーん、黒猫さんだから『クロ』とかじゃ捻りがないよね。でも『黒たん』もどうかと思うし。うーん、悩みますねー」  猫の名前に捻りを求めないで下さい。そして『黒たん』ってなんですか!? 嫌ですよ、そんな名前。もし、外で『黒たん』と呼ばれたらさすがに恥ずかしい! だから『黒たん』はやめてくれ! 私が無言の訴えを女性に向けていると、どうやら遂に名前が決まったらしい。その名前が『黒たん』でないことを祈ろう。アーメン。 「黒猫さんの名前は『クロス』で決まりです! かっこ良くなったじゃないですか!」  取り敢えず一安心だ。最悪のケースは回避出来たようだ。しかし、何故名前が『クロス』なのだろうか? まさかの『クロ』からの捻りの結果か? まさかな。 「えーとですね。クロスにした理由は『クロ』じゃ安直過ぎるし、ありきたりだから、少し捻りも加えてそれにしました!」  ……。  本当に『クロ』に少し捻りを加えてただけだったらしい。『クロス』もありきたりだと思うのは私だけだろうか? 何はともあれ私の新しい名前は『クロス』に決まった。  私もこの女性を『女性』と呼ぶのはやめて、そろそろ『彼女』という風に呼び名を変えようと思う。新しい名前を決めてくれたからだ。何故、彼女の名前で呼ばないかと言うと、私は彼女の名前を知らないのだ。だから、私は彼女を『彼女』としか呼べないのだ。名前が分かればそんな呼び名でなくて良いのだが。 「クロスの毛並み、つやつやしてます。オスとは思えないほど、可愛いです!」  女性……いや彼女は思案に耽っていた私を再び抱き上げ、私の毛並みを確かめるように背中を撫でてきた。しかし『可愛い』か。男としては複雑な気持ちになれる言葉だな。私は小さい頃、散々と言って良い程、姉に言われていたので大した抵抗感は無いものの、やはり余り好きな言葉ではないな。  彼女の頬擦りはいつまで続くのだろうか。時折、私の耳を甘噛みしてきたりするのは即刻やめてもらいたい。そう思っても身体が言うことを聞いてくれない。何故ならば、彼女の腕でがっちりとホールドされているからだ。態度で示そうにも身体が動かなければどうしようもない。終わるまで耐えるしかないようだ。
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