そして出会いは再び

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 頬擦りされること約20分、やっと解放された。朝の駐車場での出来事を思い出させられた。抱っこされるのはまだ良いが、耳を甘噛みしたり頬擦りしたり私の男としての大事な部分を触ったりしてくるのは、即刻やめて欲しい。どうやら彼女は、気に入った猫に対しては『変態』になることが分かった。出会いが出会いなだけになんかショックだ。人は見掛けに依らないと聞くが、彼女はそれに当たるようだ。  今日は色々とあり過ぎて疲れたな。朝、起きたら私は黒猫になっていてアパートのドアも開けられず大変だったのから始まり、朝の駐車場では彼女と出会い頬擦りされ、昼は魚屋の店長に蹴られ意識を失い彼女に助けられた。そして、今は新しい名前まで付けられてこの場にいる。この出会いは偶然か必然か、はたまたは『運命』だったのかは私には分からない。  しかし、あのまま人間だったら彼女には会えなかったであろうことを考えると、偶然でもあるし必然でもあった、また『運命』だったとも言えるだろう。神の悪戯とも言えるな。猫好きの神様の存在さえなければそんなことはないが。  あとは、彼女に猫に対する『変態行為』がなければ言うことないのだが、これは彼女の個性として諦めよう。一つくらい周りと違うところがあっても良いと私は思う。私だって元人間の黒猫という周りとは違っているのだからな。  彼女の個性は、私の異質な存在に比べれば個性ではあるものの周りと同じような存在になるだろう。だから私は否定しないと共に諦めたのだ。  最近の私は、少々哲学的な感じになってきてるのは気のせいだろうか? やはり、猫化体験が原因なのだろうか? うむ、全く分からん。分からないのならばさっさと諦めよう。人間、時と場合により諦めが大切だ。私の場合は猫だがな。  そういえば、私の住んでいたアパートはどうなっただろうか? まだ一日目だから何事もないだろうが、この猫の姿が何時まで続くか分からない以上心配だ。心配なんだが、この猫の姿じゃ朝の二の舞になるだろう。私の部屋を取るかこの現状維持を取るか、悩むところだ。  だが、朝の二の舞は避けたい。だから仕方がない、取り敢えず『現状維持』といくとしよう。
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