そして出会いは再び

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 『現状維持』を選択したものの、このままここにいたらまた頬擦りされ兼ねない。かと言って今の時間帯は夜なので散歩をしようにも遅すぎる。それ以前に、窓なり扉なりを開けてくれる保証はない。これで選択肢が二つ潰れた。他には『寝る』という手段もあるのだが、数十分前まで寝ていた身だ。もう睡眠欲が欠片もない。これで三つの選択肢が潰れてしまった。さてどうするか。  ふと彼女の方を見ると、私を頬擦りしたりしている内にすっかり冷めてしまったカレーを再び温め直して食べている。出来立ての方が美味しいと私は思うのだがな。  そんな私の思いを他所に、彼女はカレーを食べ終えた。そのまま食器を私が食べた固形物もといご飯の入っていた器とミルクの器を持って台所へ移動していった。何もすることがない私が、もし人間の姿のままだったのならば手伝っていたのだろうが、今は残念なことに私の姿は猫だ。猫が二足歩行で上に掲げた前足で食器を持って手伝えたら、どんなに奇妙で不気味なことか。もとより私にはそんな器用なことは出来ないから、その心配はない。しかし、もどかしさはあるぞ。  そんな妄想をしていると、彼女はデザートを持ってきて食べている。よく『デザートは別腹』と言うが、胃は一つだ。別腹もなにもあったものではない。比喩なのだろうが、そうツッコミたい気持ちも無くもない。まるで『コーラを飲み過ぎると骨が溶ける』というのには、その根拠も無いし炭酸ガスで骨が溶けるという関連性も無いということみたいに。  話がズレたが、彼女が今食べているデザートはケーキだ。しかもチョコ。時刻は21時を裕に越えている。大丈夫なのだろうか? ちょっと心配だ。そんな私自身の考えに思わず笑ってしまいそうになる。それは私が心配することでもなく、本人の意思次第なのだからな。  実は、私は表には出さないが心の中ではこんなことを考えてる人間だったのだ。それは猫になっても変わることは無かったな。まぁ、それが私という人格なのだから変わっては困る。今の私は猫なので人格でなく猫格というべきなのだろうか?
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