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うにゅ……おはよ。
……。
すまん。寝惚けて思わず変な挨拶をしてしまった。実年齢より確実に幼いな。しかし、言ってしまったものはもう遅い、取り敢えず忘れてくれ。そうしてくれるとありがたい。
さて、気を取り直し改めて『おはよう』と言う。今日は清々しいほどの朝だ。これで、昨日のことが無かったら最高なんだが、過去は変えられない。時を戻せたらどんなに良いことか。しかし、その様な可能性は万が一にもない。万ではなく億でも不可能だ。だが、出来るならやり直したいのは事実だ。
これ以上考えるのをやめなければ、どんどん惨めになっていく。取り敢えず前を見ようか。ついでに現実にも戻るとしよう。
私は今、彼女の横にいる。時計の針は7時15分を指していたが、実は20分ほど前から起きていた。本当は直ぐに起きようと思ったのだが、何故だか彼女の腕によってがっちりと固定されてしまっているから動けなかったのだ。
いや、まさかこんな展開になるとは思わなかった。仕方がないので、彼女が眼を醒ますまで待つことにした。
あれから、時計の針が50分ほど進んでから彼女は眼を醒ました。私が傍に居るのを見て、少し驚いてたようにも見えた。
「クロスって大胆なんですね。まだ会って間もないのに感心です」
大胆? 確かに行動自体は大胆なのかもしれないが、感心は違う気がするのだが? と、言うより何に『感心』するのだろうか。行動? なつき度? それとも、警戒心の無さに? 分からん。私はエスパーではないので、全く意味が理解出来ない。
彼女は私の頭を撫で回している。なんでも、毛並みの『艶(つや)』が野良猫より断然良いのだとか。そうなのか? 昨日、猫になったばかりだからなのか? それとも偶然、艶が良い猫になっただけなのか? ここまでで、元からとは一切考えていない私。確かに外見は童顔で子供っぽい印象を受ける実年齢19歳だが、そんなに外見に気を使ってはいなかったな。外見年齢を少しでも高くする努力をしなかったため、年齢制限で弾かれることもあった。年齢制限をクリアしていてもだ。
昔の話はどうでも良い。過去は過去。いくら後ろを見つめても変えることは出来ないのなら、前を見るしかない。
取り敢えず、いつまで彼女は私を撫でているのだろうか? もう、時計の針が8時56分を指しているのですが、猫にやってる朝の餌やりは?
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