それは恋の始まり?

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 私はまず、リビングとおぼしき部屋に行った。昨夜、私が寝ていたあの部屋だ。器を片付ける時に開けておいた引き戸から中へ入る。正面には、ピンク色のソファーの背もたれが見え、その奥には薄型の液晶テレビがあった。その右側には、透明なガラスの乗ったテーブルと窓がある。出入口付近からすぐ右には、本棚があり猫に関する本が沢山あった。専門書みたいなのまである。これ全部読むのか?  次にその左側を見ると、こっちにも本棚があった。中身は小さいハサミ、猫用の缶詰、猫じゃらし、ドライタイプという例の固形物のご飯、マタタビの小袋などが入っていた。ここはどうやら猫関係の物が置かれている棚らしい。  部屋の左側には、カーペットが敷かれ部屋の隅には鉢植えに入ったサボテンが置かれていた。ちょっと興味本意でサボテンに触ってみたら、棘が肉球に刺さって凄く痛かった。いや、あれは軽く言えるほどの痛さではなかった。実はのたうち回ったのは秘密だ。その時、カーペットに毛玉が付いたが見なかったことにしよう。  ここまで探索した時に、玄関の鍵が開き、その次に扉が開く音が聞こえてきた。どうやら彼女が帰ってきたようだ。 「ただいまー。……誰も居ないから返事は期待してないですけどただいまです」  一応ここに居ますよ。ここに『元人間』の現在『猫』のこの私が。という訳でお出迎えに向うことにした。彼女のご要望通りに返事込みでな。 「ふにゃー」  『おかえりー』と一応、声を出してみたが、案の定というか彼女には内容が通じなかった。しかし、お出迎えをしてくれたと感じたのか、笑顔で『ただいま。クロス』と言ってくれた。意味も通じてないのに良く分かったな。さすが『猫大好き』と謳(うた)ってるだけあるな。
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