14人が本棚に入れています
本棚に追加
今、私は彼女に抱っこされた状態でリビングにいる。その体勢というか位置的に『ナイス』と言いたいが、そこは敢えて言わないでおこう。この状況だが、数分前に台所の手前まで運んでおいた容器を見た彼女は驚いていたが、その後褒めてくれて今の体勢になっているという訳だが、やはり恥ずかしいのは否めない。
そもそも、私はこの家にいる飼い猫でもないのに、こんなに寛いでいて良いのだろうか? 自分で自らを『飼い猫』と称したが、私はまだ人間としてのプライドを棄てていない。今の姿が猫だからそう表現したに過ぎないのだ。
私は、いつまでここに居るのだろうか? 私の怪我も大したこと無かったわけだから、彼女にはもう私を置いておく必要はないと思うのだが、それはそれで困ることもある。何故なら昨日の朝の苦労が再び訪れるということなのだから。しかし、いつまでも『現状維持』を採っている訳にもいかない。あまり居すぎると彼女に迷惑が掛かりそうだ。
彼女は、迷惑とは思わないのだろうが、それは私の憶測であると同時に私からすると迷惑になるのではないかと考えたからだ。
あまり長く居るのは控えた方が良さそうだ。彼女は確かに優しい。だが、長く居すぎるとその優しさが私にとっては苦痛になる可能性が高いのだ。別に優しさは要らないという訳ではないが、いくら『可愛い』と言われようがそれ以前に私は『男』だ。それと、あまり甘えるのも格好悪いと思う気持ちも幾分か入っている結果だろう。
まぁ、取り敢えず近い内に出ていくことにすると決めた。出ていったあとが少し不安だが、そこは何とかしよう。私の家に帰るのも選択肢の一つだ。苦労するだろうがな。
最初のコメントを投稿しよう!