それは恋の始まり?

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「あ、そうそうクロス。ちょっと一緒にお出掛けしないですか?」  私が、決意を決めている時に彼女は声を掛けてきた。勿論、その言葉で現実に戻されたのは言うまでもない。  どこに行くのかは知らないが、このまま部屋に居ても暇なのは代わりない。彼女が遊んでくれる、もとい遊ばれるをすれば暇とは言えないのだが、個人ですることはないので暇なのだ。また、サボテンをつついて肉球に刺さるのは何としても避けたい。 「うにゃ(行きます)」  取り敢えず、返事を返さないままも彼女に悪いので、声を出すと同時に右の前足を上げる。挙手してるように、だ。勿論、挙手をしているのだが。  そしたら、また『可愛い』と言われて抱き締められた。私のする仕草が、彼女のツボに嵌まるらしい。よく分からないが私にはそう感じる。  彼女に連れられて、今、私は自転車のカゴの中にいる。前足で縁を掴み、立つ姿勢でだ。風を切って気持ち良いがその反面、目が開けられないのは仕方ないとしよう。  私は、彼女がどこに何をしに行くのか全く聞いてない。不思議そうに見上げても彼女は『お楽しみです』と言うだけだ。そして、彼女が自転車で漕ぐこと約4分もすると商店街が見え始めた。  あの初日に、気を失うきっかけになった商店街だ。彼処が目的地でないことを願いたい。切実にだ。  そんな私の思惑を他所に、商店街に近づいていく彼女と私。自転車は生き物ではないので省く。分かってる? そう思いたくなるほどに混乱してるだけさ。話がズレたな。  商店街の入り口に差し掛かった。この商店街の名前は『楓並木商店街』と言うらしい。私は、初めて知ったな。由来は……そのままだな。
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