それは恋の始まり?

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 私の予想は外れてくれた。彼女は商店街を抜けて大通りの方へ向かったのだ。今、私が彼女と走っているこの道は県道だ。このまま、行くと道が左右からくる国道と繋がっている。要はT字路になるわけだ。上に青い看板が有るから分かり易いな。右を行けば土手の方へ、左を行けば住宅街へ行く。彼女はどっちを行くのだろうか?  曲がったのは左。つまりは住宅街へ向かったのだ。因みに、私の部屋があったアパートは河を挟んだ向こう側の住宅街にある。まぁ、そんなことはどうでもいい。今は彼女の行く目的地が密かに気になって仕方ないのだ。  住宅街の中を進んでいくと一つの公園に行き着いた。ベンチやブランコ、鉄棒といった物があることで公園と分かるような一つの小さな空間だ。人気はない。彼女はこの中に自転車で乗り入れたのだ。  公園の出入口付近に自転車を停めた彼女は、私を抱き上げ、抱っこした状態で公園の中を進んでいく。ふと彼女を見上げると、なにかに会うのを楽しみにしている表情だ。  彼女の行く先を見ると、一つのブランコに行き着く。前方にある遊具はそれしかないから、分かったのだが。よくよく見てみると一番端にあるブランコの横木の上に毛並みがフサフサとした白い猫が座っていて、微動だにしていない。何処かで見たような猫だな。  あれか。思い出したぞ。私が猫になった日の昼過ぎの土手で会ったあの雌の白猫だ。あの猫には、私の挨拶がことごとく無視されるという苦い思い出がある。あの時、なぜ私の挨拶が無視されたのか全く分からない。そっぽを向かれたことにより、聞こえていないという訳でもなさそうだ。  まさか、彼女のお出掛けの目的はあの白い猫なのか!? まぁ、猫としての感覚では『美人』になるのだろうが、私は外見は猫で中身は人間も同然の曖昧な存在だ。そのはずなのだが、猫の本能が再び挑めとか何とか言ってくるのはどうにかしてもらいたい。
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