始まりはその日から

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 テレビを見ている私だが、だんだんつまらなくなってきた。見始めて一時間ほどした頃か。私はテレビを消した。  何もすることがない。もとより出来ない。台所の引き戸でも冷蔵庫でもリモコンでもやってみて分かったが、この身体では人間の時と同じような生活、動きが出来ないからだ。  気分転換に外に出て、散歩をすることにした。その途中で何か食べ物をくれる人がいると良いのだが。  私はそんな淡い願いを抱きながら、散歩に出るために玄関に向かった。  だが、と、扉が開けられない。頑張って鍵は外すことは出来たが、ドアノブが回せない! どうすれば良いのだ。  さんざん悩んだ挙げ句に思い出したのは、昨日の夜に開けた窓の存在だ。たしか鍵は掛けていなかったはずだ。それに賭けるしかないようだ。  急いでまた玄関の鍵を掛ける。その間の所要時間は10分だ。鍵を掛けたら部屋に戻り、その窓を見た。  鍵は開いていた。ナイスだ、昨日の私よ。これで駄目だったら私は、死ぬまでこの部屋に閉じ込められていただろう。  窓ガラスに肉球を押し付け、ゆっくりと右にずらしていく。時折、何回か失敗してしまったが、無事外への道が開けた。  私は外に飛び出した。この部屋があるのはアパートの一階だ。だから飛び出しても問題はない。その後、きちんと窓を閉めて私は歩き出した。
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