始まりはその日から

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 暫く空腹を抱えて歩いていると、私は一つの駐車場に着いた。何気なく見ると一人の女性が多数の猫相手に餌もといご飯をあげてるではないか。私は今、お腹が空いている。丁度良い、混ざるとしよう。   他の猫に混じって、一人の女性からご飯を貰っている。なかなか美味しいと思った。ご飯を食べるのに夢中になっていると、何故か浮遊感を感じた。  ふと、視線を上げるとそこには女性の顔があった。今度はそこから視線を下げると私を抱えるように組まれている腕があった。  ここで、私は初めてふいに襲った浮遊感の正体を知ることが出来た。つまりは抱っこされたのだ。 「ここら辺じゃ見ない黒猫さんね。新入りかな?」  女性は私を抱っこするとそう言ってきた。  はい、そうです。今朝、猫になったばかりの元人間です。そう言えたらどんなにこの女性は驚くだろうか? いや、もしかしたら変な目で見られるかもしれない。何を馬鹿な事を言ってるのかと一蹴されるかもしれない。まぁ、喋れないからそんな心配はないだろうが。  しかし、なんか恥ずかしい。私は男だ。猫ではオスか。人間の時で、こんな経験は赤ん坊の時以来だから恥ずかしいのだ。  だから、もじもじしてみた。そしたら『可愛い!』って言われて、ぎゅっと抱き締められた。選択肢を間違えたのだろうか。
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