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『遅れて申し訳ありませんでした、黒珠理事長』 風月が詫びると、理事長はスッと立ち上がりこちらへ来ると。 ―ムギュウ 「ん…っ!?」 琴音を抱き締め、『可愛い~♪』とはしゃいでいる理事長。 琴音(正直…苦しい) 『失礼ですが、姫が女子としてあるまじき姿に変わり始めておりますが…。』 理事長の抱擁に、琴音は目の焦点を失い意識を手放しかけていた。 『おい、大丈夫か…?すまんな、つい可愛いモノを見ると身体が先に行動しちまうんだ。』 漸(ようや)く解放された琴音は大きく息を吸い、足りない酸素を補給した。 「いえ…可愛くはありませんが…ありがとう、ございます…」 まだ意識が朦朧としているのか、琴音がしどろもどろに答える。 『大丈夫そうだな、あたしの名は、黒珠 棗(クロス ナツメ)だ。口調は気にすんなよ?優しくとか手加減とかいう言葉とは無縁の場所で生きたモンでな…。ま、よろしくな!』 思わず「兄貴!!」と言いたくなる様な口振りで自己紹介をした理事長。 髪は長く腰より少し下まであり、綺麗な黒髪でスタイル抜群、背は平均くらいだろう。 「柊 琴音と言います、こちらこそお世話になります。」 短く挨拶をしお辞儀をすると理事長は『切り替えが上手いモンだなぁ』と意味深な言葉を残す。 琴音は何の事だろうと首を傾げるが、わからず考えるのをやめる。 『理事長、俺琴音ちゃんに一目惚れしました♪』 朔が理事長に報告をする、琴音は報告内容にはい?といった表情だ。 琴音(そういえば、用事があるって言ってたな) 琴音は風月の言葉を思いだし、納得する。 琴音の鈍さは家族ですら驚くくらいだ、自分の事に疎いと琴音の母である彪音(アヤネ)が言っていた(らしい)。
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