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「本当に必要ないですよ…?何かあれば自分で倒せますし…。」
琴音は気にせずそう言うと理事長は肩をすくめて言った。
『前にも言っただろう?姫は手をあげてはいけない、と。苛めを受けたら必ず相談しろ、と言ったのはその為だ。助ける為に手加減してやるのは構わないけどね、自分の為に使う事は許す訳にはいかないんだよ。』
「どうしてですか?」
普通に返す琴音に呆れて初めて恍輝が口を出した。
『この学園で【姫】の座になる者は、周りを優しく包み込み、和ませる為の存在だ。その姫が手をあげてしまえば、学園に来る者が減るだろ。』
「…迷惑掛ける訳にはいきませんので、納得はいきませんが了承しておきます。」
琴音の言葉に理事長は安堵した。
(まさか、このあたしが"安堵"するハメになるとは…な。)
理事長は自分の身に起こる今まで有り得なかった現象に、内心笑ってしまう。
『明日は多分、朔と梭樛が来ますよ。』
風月の言葉に頷くと、理事長は時計を見て言う。
『さぁ、時間になるからお行き。遅刻された理由に使われちゃ困るからね。』
『わかりました、行きましょうか。姫…。』
風月がそう言い手を差し出す。
琴音は頭上に?を三つほど浮かべると恍輝が耳元で囁いた。
『風月の手を取れ。姫は護衛のどちらかに手を引かれるのが基本だ。』
「ひゃあっ!?」
琴音は自分の口をパッと押さえる。
耳元にかかる吐息に過剰反応してしまったようだ。
『わりぃ…。』
恍輝が軽く驚きながら謝る。
風月に至っては少し笑っているようにも見える。
琴音は怖々(おずおず)と手を風月の手に乗せる。
ようやく準備が出来た為、理事長室を出て教室に行く。
今までの様子を静かに見ていた理事長はニヤニヤと怪しく笑っていた事に気付いたのは恐らく風月だけだろう。
『これからが…楽しみだな。』
一人そう呟くと、窓の外を眺めた。
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