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ここは何処にでもある普通の学園前…。 一人の少女が立ち尽くして居た。 「今日からここに通う事になるのかー…。普通に生活出来れば良いんだけどなぁ…。」 彼女……――柊 琴音【ヒイラギ コトネ】はとある事情で新しい学園に編入する事になった。 ――朱雀高等学園。 彼女が新しく編入する事になった学園だ。 この学園の偏差値はそれ程高くなく、男女共学の何処にでもある様な学園。 ただ一つだけ言うと…――。 『きゃあぁあ、来たわぁぁあ!!』 『梭樛様ぁああぁぁ!!!』 『朔先輩だわー!!!カッコいい!!!』 『風月様ぁああぁ!!!』 『水無月兄弟…いつも梭樛様だけしか居ませんわー!!!』 明らかに近所迷惑とも思える声が学園内から響き渡る。 全て女子の声で、騒がしい事この上ない。 「何の騒ぎ?…梭樛とか朔とか…兄弟?」 琴音は煩い声に訝しげに顔を歪めたかと思うと、スグに疑問を抱く。 微かに聞こえた名前だ。 男女共学とは聞いていたが驚いたのだ。 朱雀高等学園は昔、男子校だったらしい。 それも、眉目秀麗、成績優秀、スポーツ万能…―― あげたら切りがないくらいのカッコいい部類の生徒ばかりだったと言う噂を聞いている。 だがこの学園の理事長がカッコいい生徒だけでは、高校生活に華がないだろうと言う配慮で、女生徒も募集したそうだ。 学園内には学生寮が設置されており、悠々自適な生活が送れるとも聞いていた。 『素敵よねぇ…あの方達…』 『学園の華だわぁ』 急に静かになったので不思議に思い、学園を覗いて見ると。 先ほどまで騒いでたであろう女子がうっとりした表情で、立ち尽くしていたのだ。 「何かこの学園でやってける自信なくなってきた…。」 琴音は親に『あまり目立つ事は避けて』と注意されていた。 だから普段腰まである長い髪には三つ編みをして、目が悪い訳でもないのに眼鏡を掛けさせられた。 その姿を見た家の者達は必死に笑いを堪えていたが。 「全く…なんでウチ…じゃなくて私がこんな格好…」 ブツブツと文句を言いながらも学園の理事長室に向かうべく歩みを進める。
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