序章 これが、いつもの朝。

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「ヒナ、起きて」 少し低め、でも優しいトーンの声が布団越しに耳をくすぐる。 本当はもっと前から目を覚ましていたけれど、このところ寒い日が続いているから、なかなか起きられない。 二、三回寝返りを打ってからそっと布団から顔を出す。 私と目が合うと、シンが首を傾けて私の顔を覗き込み、黒目がちな目を細めて笑う。 薄茶色の短い髪が朝の光に反射して、男の人なのに綺麗だな、と見とれそうになる。 「おはよ、シン」   とっくに頭はすっきりしていたけど、わざと小さくあくびをして、気怠い声で私は挨拶する。 「おはよう。もう朝食の用意出来てるよ」 「うん、今行くう」   首を一度だけ縦に振り、甘えるように語尾を伸ばして返事をするとシンがまた笑ってくれた。  
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