銃と刀とコートの男  

2/6
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「くそっ、またか」 五度目のエンストに苛つき、男は声を荒げた。 「だからマニュアル車は嫌いなんだ。クラッチ?意味が分からん、ATを見習え。ATを」 そう言いながら男は運転席のドアを開けた。 助手席に置いてあった大きめの黒い角張ったケースを掴み、車の外へ投げ、シートに立て掛けて置いた刀を掴むと車から出てきた。 ドアを閉め、男は一番最初に目に入ったタイヤにショートキックを放つ。 それから刀を腰にさし、投げたケースを開けて中に入っている大きめの銃を取り出す。 右手に真っ黒な何の装飾もなければ名称すらもない銃を、左手には武器ケースを持ち、車に背を向けて歩き出した。 車から50m程離れた所で立ち止まると、男は振り向き様に三発続けて発砲する。 「ガンッ×3」 銃声が響いた直後、車のエンジン部分が爆発し、火を噴きながら全車体を吹き飛ばした。 飛び散る破片や転がるホイルを無視して、男は再び車に背を向けて歩き出した。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!