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あれは何年前だったろう。
父親は、物心付く前になくなっていたので、母親と二人で暮らしていた。
風呂無し、共同トイレ、小さな台所と、六畳一間で、母子家庭が生活して行くには十分なボロアパート。
母親は、子供を育てて行くため、水商売をしていた。
小学生が、母親の帰りを1人で待っている。
毎日、母親が置いていくお金で出前を取る。
それが当たり前になっていた。
母親が、客と付き合う度に二三日一人で待つ事もある。
だから、今回もすぐに帰って来ると思っていた。
しかし、三日経っても、一週間経っても母親は、帰って来ない。
彼、岡崎トオルは、小学五年生で、一ヶ月も一人アパートで、母親の帰りを待っていた。
昼間学校にいる間に帰って来るかと、無断で休んでいた。
担任や民生委員の人が来ても、動こうとしない。
民生委員は、衰弱していくトオルを見兼ねて、施設に連れて行った。
「今日から、ここでお母さんを待とうね。大家さんには、ここの住所言ってあるから。お母さんが迎えに来るまでね。」
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