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※
「トオル。朝だよ。」
トオルの顔に差す光を遮るように伸嘉が覗き込む。
「起こして。」
トオルは、目を閉じたまま手を伸ばす。
「何、子供みたいな事言ってるの?僕の方が体痛いのに。」
「俺は四歳の子供だもん。」
伸嘉は、全身の痛みを堪えながら、トオルを起こす。
「たく。誰が四歳児なの?こんな大きな四歳児がいるか。」
「三上家に引き取られてから、心が育ち始めたからなの。」
「はいはい。早く着替えないと遅刻するよ。」
(何で、初めてであんなに元気なんだ?)
などと思いながら、伸嘉に渡された制服に着替える。
後日、両者の親から、あらぬカミングアウトされるまで、二人だけの秘密を楽しんだトオル。
カミングアウト。
それは、突然だった。
伸嘉の家に呼び出され、親の帰りを待っていた二人。
帰ってきた親の姿を見て、二人で顔を見合せた。
トオルの親父と、伸嘉の親父が、腕を組んで帰ってきたのだ。
話をする前に、浩一が夕食の準備を始める。
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