耕平君の長い一日 『夜のプール』

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「ピーっ! 大丈夫だから早く来いって…!」 健(けん)ちゃんが手招きする。 恐る恐るピーがプールに脚を沈めていった。 照明も無い真っ暗闇のプールは、 好いように云えば神秘的……。 悪く云えば……、 不気味だ。 聞こえるのは、たまに遠くを走る車の音くらいで、 僕たちが動かなきゃ何の音もしない。 昼間にみんなで泳ぐ同じプールとは全く違う、静かな空間。 まるで僕たちだけをこの世界へ取り残したような、不思議な感覚がした。 「ピー、何メートル泳げるようになった?」 僕が訊ねた。 「……10メートル」 ピーは運動音痴。 5年生にもなって、たった10メートルって……。
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