78人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
「ピーっ! 大丈夫だから早く来いって…!」
健(けん)ちゃんが手招きする。
恐る恐るピーがプールに脚を沈めていった。
照明も無い真っ暗闇のプールは、
好いように云えば神秘的……。
悪く云えば……、
不気味だ。
聞こえるのは、たまに遠くを走る車の音くらいで、
僕たちが動かなきゃ何の音もしない。
昼間にみんなで泳ぐ同じプールとは全く違う、静かな空間。
まるで僕たちだけをこの世界へ取り残したような、不思議な感覚がした。
「ピー、何メートル泳げるようになった?」
僕が訊ねた。
「……10メートル」
ピーは運動音痴。
5年生にもなって、たった10メートルって……。
最初のコメントを投稿しよう!