耕平君の長い一日 『夜のプール』

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「なにっ?! 何が起こったの?!」 僕は大きな声で叫んだ。 垂れてくる水で、ぼやけた視界にもはっきりと判る、さっきまでとは全く違う景色。 生暖かい空気、 紅黒く染まる空、 風も無いのに、小刻みに波立つプール……。 いくら初めて見た日の出だからって、いつもこんなんじゃないってのはすぐ分かった。 周りの気持ち悪い雰囲気に、身体の芯から震えがくる。 怖くなった僕たちは、大急ぎでプールから上がり、海パン姿のまま、小学校を逃げ出した……。 「なんだったんだろうな? あれ……」 帰り道、健ちゃんが訊ねた。 何も云わず、ただ首を傾げた。 僕にも分かるわけがない。 10分くらい歩き、信号機の点滅する横断歩道に差し掛かったときには、空は青白く、風も涼しく変わってた。
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