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ふと、顔を上げると病室内には、俺以外誰も居なくなってた。
今まで居たヤツが、もともと居なかったような…。
「…はっ、今の俺みたいだな」
自嘲して、ゆっくりベッドから降りる。
もうすぐ夕方。今日は何月何日なんだろう。
頭の片隅でそんなことを考えながら、病院服のままドアを開ける。
廊下を覗けば人は行き来してるみたいだけど、殆どが見舞い客らしく、誰も俺を直視しなかった。
…考えられなかったんだ。アイツの中に俺の存在が無いってことが。あのはにかんだような顔を、もう二度と、見られないなんて。
だから、嘘だったって後でメンバーに笑ってやるんだ。嘘に決まって、るから。俺は意を決して、一歩を踏み出した。向かう場所はもちろん、アイツの病室。
「……………あった」
【上田竜也様】
部屋の前で一度大きく深呼吸をして、そっとドアをノックする。
そうすれば、小さな返事が返ってきた。
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