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「…カメの、友だち…」
不思議そうに俺を見る上田に、苦し紛れの一言しか出なかった。
けれど、上田は「そっか。なるほどねぇ」と小さく呟きながら、読んでいた本を閉じる。
「なに、読んでたんだ?」
「ん?あぁ、コレ」
上田が見せてくれた本の表紙に言葉を失った。それは、天文学の本。まぁ、正確に言えば、星座や惑星の図鑑。
「な、んで?」
「んー、なんでだろ。よく分かんないけど何か綺麗だったから…」
ベッドの枕元には、いくつかの本が積まれてた。上田が好きそうなボクシングのトレーニング本なんかがある中で、どうしてソレを選んだのか。
俺の中で、また期待と不安が入り混じる。
「カメ、捜しに来たならここじゃないよ?さっきまでいたけど。スタジオ戻ったか、帰ったんじゃないかな。」
「あ……そ、そっか…なら、俺部屋戻るわ」
「そいえば、包帯してんね。あんたも入院してんの?」
「ん。」
上田の問い掛けに胸が締め付けられるのを感じて、俺は短く返すとすぐに部屋を出た。
ドアを閉めたとたん、体がドアを伝ってズルズルと崩れ落ちる。
目頭が熱くなって、顔を覆う。
「なにが…カメの友だちだよ…」
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