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信号が青に変わって、俺は上田の横顔に微笑みながら再び車を走らせた。
深夜、小雨の街は、車はおろか人の数もまばらで、濡れた車道が車のライトだけを反射していく。
「あ!この曲好き!♪」
BGM程度につけたラジオから流れてきたのは上田が好きな曲。
自然と上田の体がリズムを刻み始め、その様子を見つめていた、ちょうどその時。
「中丸、前!!!」
上田に見とれていた俺は気付かなかった。車の前を、1匹の猫が横切った事を。
上田の声で、ハッとした俺はとっさにハンドルを切った。
キキィィィィ!!!!
Σガシャーン!!!!!!
ーーーーーーー
「ッ…」
俺はエアバッグに勢い良く顔を埋めたせいだろう、首に僅かな走った痛みで目が覚めた。眉間に皺を寄せながら意識を整える。
「上田…、悪ぃ、大丈夫か?」
「……」
「…上田?」
返事の無い上田に嫌な予感を覚えた俺は、ぶつかった衝撃でチカチカと点滅する電柱の灯りを頼りに上田の居た助手席に手を伸ばした。
ヌルッ…
「…ッ!!?…上、田?…上田!」
生暖かい液体が指に触れた。鼻に届く鉄の臭い。
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