始まりの序曲

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 そして一葉がそれを打ち砕いてくれたことで、自分たちも同罪だと認めたのだ。  しかし、一葉は自分が許せなかった。  あんなに死ぬ気で頑張っていたのに、自分の身勝手で大会出場権を棒に振ったのだ。  そして何より、一番彼を苦しめたのは――――。  親友の死だった。  一葉に監督との行為を見られた敦は、その日のうちに登校拒否をした。  だが、一葉の潔白を証明するために警察に被害届けを出し、問題を世間に明るみにしたのだが、それが彼を追い詰めてしまい、自らの命を絶ってしまったのだ。  その知らせを受けた一葉はショックを受けた。  彼の遺書には感謝の言葉が綴られていたが、それが一葉を苦しめる要因になった。 『俺が我慢をすれば良かったのか?俺が全てを潰したのか?』  一葉は自分を責め続けた。  そして地元に戻り、近場の公立高校に編入をした。  家にいても、暗くなってしまうからだ。  決して消えない過去の傷。  自分の身勝手さで大事な親友を死なせてしまった罪。  決して忘れてはいけない。  一葉は全ての世界を拒絶してしまったのである。
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