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自己紹介を終えて、担任から窓側の一番後ろの席に座るよう、指示を受けるとトコトコと向かった。
女子生徒の横を通り過ぎる度に黄色い声が耳に入ってくる。
『久々の共学だから仕方がないか。』
私立桂川学園は男子校だ。
女子生徒も、女教員もいないつまらない学校だったのを思い出しながら、席に着く。
授業が始まっても、一葉はカバンから筆記用具すら出さずに、ずっと窓の外の景色を眺めていた。
休み時間になると、女子が一斉に一葉の元へ駆け寄ってくる。
転入生がイケメンだからこそ、女子は駆け寄ってくるのだ。
矢継ぎ早に質問をされるのだが、一葉は上の空だった。
ぼうっとしている一葉も格好いいのか、女子は更に悲鳴を上げる。
しばらくすると授業開始のチャイムが鳴り、生徒たちは再び自分たちの席に戻る。
さっきまでの喧騒があっという間に静かになったので、さすがに無反応だった一葉も少し動揺した。
しかし、このままでは休み時間ごとに女子の質問攻めにあってしまう。
それだけは避けたいと思った一葉は、授業が終わるとダッシュで教室から飛び出して行った。
当然、女子からはブーイングの嵐。
それも無視をして、一葉は校舎内を歩き回っていた。
歩きながら一葉は思った。
(俺、今日初めてこの学校に来たんだよな・・・・。)
自分が転入生であることをすっかりと忘れていたのか。
あるいは教室にいたくないという気持ちが全ての記憶を消し去ってしまったのか。
見事に、一葉は迷子になってしまった。
授業が始まったのか、校内はシーンと静かだ。
その中でペタペタと響く、足音。
余りにもの無音の世界に、一葉は不安になってきた。
(どこに行けば教室に戻れるんだ?)
騒がれてでも、黙って教室にいれば良かったと、今更ながらに思ってしまう。
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