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「白状しなよ」
「──しろよ」
息合わせやがって。
それとお前ら顔近づけんな。
更にどんどんと顔を近づけくるので、仕方ねぇと思って、俺が口を割ろうとしたとき、ちょうどよく始業の金が鳴った。
このタイミングを逃す手はない。
「ほら、早く座れ」
俺は二人の背中を押して、遠ざけた。
腑に落ちないようすの二人から、
「逃げたね」
「逃げたな」
なんて聞こえたような聞こえなかったような。
大丈夫、つまらない話だ。
†
放課後、俺はひとりで図書館にいた。
司はテニス部に行ったし、勝は柔道部の練習に付き合ってるし、俺は帰ってもやることないんで勉強してる。
今日出された数学の宿題に頭を悩ませてる所だ。
この学校、年度の序盤の割には授業の進行速度が早い。正直受験で身につけた集中力も無意味に思える。
「まいったな……」
そうやって頭を抱える俺に、誰かの声が上から降ってきた。
「それは一つ目の式を解いてから、符号をこう逆にするといいんですよ」
声をかけてきた人は指差して教えてきた。
顔を上げずに、その声に従ってみる。ノートに数行を埋めると、
「なかなかいい感じだ。ありがとう──って、先輩?」
顔を上げると真理亜先輩の顔が。俺と目があった瞬間、にこっと目を細めて口角を上げた。
「こんにちは、ふみきさん。お勉強ですか?」
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