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「まあそんなところだ。なかなか難しくて投げ出そうとしてますよ」
空元気で笑って見せる。脱力感に襲われた。
「私でよければ、いくらか力になれるかもしれませんが……いかがですか?」
「じゃあ、お願いします」
速攻で頼み込んでいた。それに少々驚いたらしい様子の先輩は、次の瞬間にはにっこりと笑った。
「はい、お願いされました。隣、失礼しますね」
「へ……」
普通に考えたらそうなるか。
いきなりの不意打ちにただただ狼狽。心の中で。
「どこからやりましょうか?」
「えっと、じゃあ、その、ここからで」
駄目だ。 顔が近くて少し意識してしまう。
「どこかわからない所はありますか?」
「ええと……今は特に」
先輩じゃない。
問題に意識を集中させるんだ。そうすれば大丈夫。
そうだ。落ち着け。
──よし、問題に取り組もう。
しかしどうにも目が先輩の方に行ってしまうのは自分でも最低だと思う。先輩がいるのは勉強を教えてくれるからだ。決して観賞の為などではない。
そんな余計なことばかり考えているから、勉強できる気がしないような。
†
その後、宿題が終わるまで俺は先輩に付き合ってもらった。
すごく教え方がうまかったのだが、終始先輩のことが気になってしまって結局わかったようでわからなかったような。
でもまぁ問題が全て解けているから一応はわかったんだろうな。
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