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白い闇に黒い人型シルエットが一つ。
そこにいるのは誰だろうか?
目を凝らす。だんだんと視界が明瞭になる。
「──ふみき」
俺の目に見えたのは──
「親父!」
「……すまない」
懺悔するような暗い表情の親父はそう言うと俺に背を向けて歩き出した。ひどく距離が開いている。だんだんその背中が小さくなっていく。
「待てよ! 親父!!」
その背中を追いかける。
しかし、いくら走っても追いつかない。
親父は歩いているのに追いつけない。理不尽な体感が、心を乱す。
「──親父!」
親父に向かって手を伸ばす。遠目に見える小さくも、大きな背中へ。
瞬間、眩い光が俺を包んだ。
意識はそこで途切れてしまった。
†
「──親父!」
手を伸ばした先に親父はいなかった。
代わりに真っ白な天井が俺の視界に入る。
夢、か……。
朝からなんて嫌な夢を。
寝覚めは最悪だ。なんの暗示なのかは知らないが、質が悪い。
親父……。
俺は頭を掻きながら、体を起こす。
時計はいつも通り針が七時を指す形態をとって鳴いていた。
アラームを止めて一息。
「ふあ……」
我ながらマヌケな欠伸だ。おもしろみもなにもない。
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