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頭に血が上った俺は、脱兎の如く走る。
風に殴られながらも、ついに男まで一メートルのところまで近づき、次の瞬間思いっきり跳躍。
「──平和なこの商店街で人騒がせなことやってんじゃねえ!」
見事に俺の体は男の上にのしかかり、男は倒れた。
「ふぎゃッ!?」
男は腰をやったらしい。何かの破壊音を俺は聞いた。
その後、ひったくりは完全にダウンし、商店街の皆さんにフクロにされていた。
自業自得。学生の、しかも女の子のものをうばった。
当然の報いである。
それはそうと、奪い返したこの鞄、俺の学校のやつだよなぁ。
俺が鞄を眺めていると、
ある一人の女の子が声をかけてきた。
「あの……あなたが取り返してくれたんですよね?」
「あ、ああ……」
女の子に鞄を返してやった。のだが。
と同時に目を奪われていた。それが彼女にばれていなければいいのだが。
その彼女は目が大きくパッチリとしていて、あごも鋭く、髪は少し緩やかなウェーブがかかっており、雰囲気からホントのお嬢様という感じがした。
一般にいうお嬢様は知らないけど。
「あの、ちょっと失礼しますね」
と、いってハンカチを取り出して俺の口に当ててきた。
「いッ……!?」
このとき自分の口が切れていることに気づかず、悪臭が口中を支配した。
「あっ、すいません!」
「い、いや、大丈夫だけど、ハンカチが……」
「いいんです。私のためにあなたが傷ついてしまわれたのですから。しばらく当てておいてくださいね」
「ああ……ごめん」
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