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用兵の常道から言って、戦闘艦を輸送船代わりに使うなど愚策……それをあえて行う敵の窮状が知れる。
兵站を重視していると聞く米国としては、背に腹は代えられぬと言う事なのであろう。
……敵の思惑はそうとして……敵水上部隊にどう臨むべきか……
考え込む私を、置いて藤井は更に話を進め始めた。
「六戦隊はこれに対し……
・予想会敵海域をボーゲンビル島南方海域…ショートランド島とモノ島間の水道と想定。
・敵艦隊への奇襲による殲滅を企図し、厳重な電波封止を行う。
・敵艦隊が予想進路を採らなかった場合に備え、第十八戦隊『夕張』、第三十駆逐隊『睦月』『弥生』『望月』『卯月』をモノ島南西方面にて哨戒待機させる。
……との事です。」
「水道の出口で待ち伏せ、タリキナヘ進む敵艦隊に丁の字戦法を持って挑むと……五藤司令官は申しておりました。」
丁の字戦法……この言葉を聞いて心が躍らない海軍軍人はいないだろう。
この態勢に持ち込めば一方的に敵を撃滅できるのだ。
皆の意気が高揚して行かない訳はない。
……しかし……これが我が採りうる最善の策であろうか?
聴き触りが良い言葉に踊らされ、本質を見誤ってはいないか?
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