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昭和十七年三月某日―
トラック環礁―
南太平洋における、帝国海軍最大の拠点である天然の要害に軽巡洋艦 夕張は入港した。
投錨作業を終え、艦長と僚艦の投錨作業を見守っていた自分に通信員が電報を回覧しにやって来た。
「航海長、回覧お願いします。」
電報と万年筆を手渡され航海長の欄にサインをし電報を読み始めた。
横鎮人発第1192号
海軍大尉 長谷川政敏
昭和十七年四月一日付
海軍大学校館山分校
専修科海上戦術課程入校ヲ命ズル
「なにっ!?」
定期移動の時期でもないのに自分に人事移動が発令されたという驚きよりも『何故に急に艦から下ろすのか!』という怒りが湧いてきた。
「艦長!艦長はこの人事をご存じでしたか?」
「どうした?航海長。」
自分は持っていた電報を艦長に手渡し
「せめて事前に情報なり教えて頂ければ……」
こうして発令しまうと、いくら文句を言っても覆らないのは長い海軍生活で分かってはいるのだが……恨み節を言わずにはいられなかった。
「そう言うな航海長、この人事は俺も全く寝耳に水だよ。しかし、海上戦術課程ってのはなんだ?しかも館山分校など聞いた事が無いな。」
「確かに自分も聞いた事がありません。」
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