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「予想より敵の動きが活発であることは否めません……否めませんが、敵としても動かざるを得ないと言う事でありましょう。」
「敵の意図するところ、それは補給であります。」
意外な言葉であったが、納得するところでもあった。
敵にとってみれば、ボーゲンビル島には補給の途切れた二個師団もの陸兵がいるのだ。
補給が切れ、陸兵は引くことも進むこともできない……古来より飢えた兵が勝った例はない。
航空機の妨害を受けることのない夜間の内に進出し、補給物資を陸揚げの後、素早く離脱する……足の遅い輸送船では不可能と言う訳だ。
……「敵は高速艦艇で補給を試みると言う事ですな……全て夜間の内に……」
私の出した解は及第点だったのだろうか、藤井の口角が若干上がったのを私は見逃さなかった。
「その通りであります。情報によりますと、敵駆逐艦六隻の露天甲板上に物資を満載しているとの事です。」
「そのためこの六隻の戦闘力は無き物と考えます。」
「…敵もよく考え付くものだ。大した量を運べる訳でもないのにな。鼠がチョロチョロしてるのと変わらんのぉ。」
有賀司令の独り言ともつかぬ声が耳に残った。
……確かに…言いえて妙である。
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