連戦

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……「……本当に之で良いのでしょうか……」 私の心の声から出た呟きが契機となって、室内が波紋を打つかの如く静まっていく。 刺さるような視線を一身に浴びながらも、私の口は言葉を吐き続けた。 「奇襲と申しますが、敵は敵中に飛び込む覚悟を持って進出して来るでしょうから、敵の警戒は厳重なものと考えます。奇襲の要件を満たさないのではないでしょうか?」 「また、電波封止下で部隊を二隊に分けるのは、互いに連携が取れず、逆に敵に利する事にも成りかねません。」 「いまだ一部の部隊では、電探を闇夜の提灯の如く思われている節が有ります。」 「状況にもよりますが…今回の場合は電探を有効に活用した方が、戦闘で優位に立てる……」 「では、長谷川艦長は如何にするべきと考えますか?」 私の言葉を遮るように、井上艦長が口を開いた。 先任者への言葉として、教科書通りの語句を並べているが、不満や疑念といった感情を練り込んでいることを隠してはいない。 突き刺さる視線から察するに、これが彼らの私に対する態度と言う事だ。 …… 思う所もあるが……さすがに有賀司令の前で、『若年者に分からせる』……のは止めておこう。
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